学習記録

擦り傷と湿潤療法(その2)

前回の記事に関して、管理人さんからアドバイスをいただいたので、加筆します。

創傷被覆材の構造について

今回は

【公表番号】特表2004-520096
【公表日】平成16年7月8日
【発明の名称】ヒドロゲル創傷被覆材
【出願人】
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・メディカル・リミテッド
【発明者】
【氏名】アディソン・デボラー、シルコック・デレック・ウォルター

における創傷被覆材の構造について解説します。

断面図を見てみると、この被覆材は5層になっていることがわかります。

書き直してみました。

上から
ヒドロゲル層
表側シート
吸収剤層
接着剤
裏当てシート です。

ヒドロゲルの層が傷口に当てる面となります。

ヒドロゲルとは

「ゲル」とはゼリーや寒天のように水分を含んだ、プルプルした形状ものです。ゲルは網目構造になっており、そのゲルから水分を抜いたあとの骨組みの間に水分を含んだ物が「ヒドロゲル」です。

ここに液体を吸収して膨らむと同時に、創傷周囲の湿度を保ちます。またこのヒドロゲル層には皮膚軟化剤、積極的治療薬及び抗菌薬を含有しても良い、とあります。

【0029】
ゲルを形成する高分子の代わりにあるいはこれに加えて、ヒドロゲル層は一つ以上の皮膚軟化剤を含有してもよい。皮膚軟化剤は、皮膚表面を滑らかにし、水和反応の度合いを高めるために使用される。皮膚軟化剤は、皮膚の外側層からの水の損失を閉塞するか、皮膚への水の結び付きを改善することにより機能を果たす。皮膚軟化剤はアトピー性湿疹または魚鱗癬の治療に特に有効である。好ましい皮膚軟化剤には、白色柔軟パラフィン(white soft paraffin)、黄色柔軟パラフィン(yellow soft paraffin)、液体パラフィン、尿素クリーム、ラノリン、ピロリドンカルボキシレートナトリウム(sodium pyrrolidone carboxylate: PCA Na)、待宵草エキス(ガンマリノレン酸)、大豆油、ティー・ツリー油、ココナッツ油、アーモンド油、カミツレエキス、鱈肝油、ピーナッツ油、エミューオイル、アロエ・ベラ、ひまわり油、アボカド油、ホホバ油、ココアミド(cocoamide)、およびこれらの混合物がある。
【0030】
さらにヒドロゲル層は、一つ以上の積極的治療薬または抗菌薬を含有してもよい。適切な治療薬には、成長因子、鎮痛剤、局部麻酔剤およびステロイドがある。適切な抗菌薬には、例えば銀化合物(例えばスルファジアジン銀)およびクロルヘキシジンのような消毒剤および抗生物質がある。積極的治療薬または抗菌薬は、通常はヒドロゲル層の乾燥重量を基準として0.01重量%〜5重量%の量、添加される。

この特許では、表側シートの形状も重要なポイントで、「テーパ状の毛細管をもつほとんどの液体不透過性のシート材料から形成される」とあります。

「テーパ状」とは円錐台状の形のことです。

(図の出典:U.S.Pantet 3929135)

この形状の細い穴があることで傷口から体液が出てきても吸収が可能で、かつ逆戻りしない、ということなのです。

これによって、傷口に対して常に適度な湿り気が適用され、でもじめじめと濡れるのではない環境が提供されるということです。

この特許が公開されたのが2004年。
現在のJohnson & Johnsonのサイトに最新のキズパワーパッドの解説があるのですが、今は2層になっています。

(出典:https://www.band-aid.jp/kizupowerpad

技術の進歩が感じられます。やっぱり特許って面白い!

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